3.特定調停
特定調停とは
平成12年に施行された「特定債務者等の調整の促進のための特定調停に関する法律」によってできた制度です。特定調停は、債権者1社ごとに申立てます。債権者が5社いれば、5回調停をしなければなりません。なので、債権者数が多いと、結構大変なことになります。
また、特定調停は簡易裁判所に申立てますが、申立てると調停委員が選ばれます。この調停委員が、債権者と債務者の間に入り、話し合い・互譲によって解決していきます。
特定調停でも、「利息の引き直し計算」を行って借金の額を確定し、それを約3〜5年で分割弁済していくように調停を行っていきます。また、特定調停では将来利息はつけないのが一般的です。
代理人司法書士
特定調停の管轄は、相手方債権者の本店または営業所を管轄する簡易裁判所となります。従って、認定司法書士であれば、その調停によって得られる利益が140万円以内の場合、その特定調停における代理人となることができるようになりました。「調停によって得られる利益」の考え方は、任意整理と同じです。
管轄
特定調停の管轄は、相手方債権者の本店または営業所を管轄する簡易裁判所となります。また、特定調停では、一括自庁処理が認められています
。一括自庁処理とは、特定調停において、複数の相手方がいることによって、管轄簡易裁判所が複数になった場合に、どこか一つの簡易裁判所で、特定調停を申立てることができるということです。この場合、どこの簡易裁判所に特定調停を申立てればよいかというと、相手方の過半数以上を管轄する簡易裁判所となりますが、債務額も関係してくるようですので、事前に、管轄の簡易裁判所に確認しておくことがよいでしょう。
必要な書類
特定調停では、自己破産や個人債務者再生ほど、多くの書類は必要ありません。但し、相手方債権者の資格証明書(法務局で取得、1通1,000円)が必要になってきます。しかし、簡易裁判所によっては、メジャーな債権者の場合は、資格証明書が不要な場合もあるようです。
その他、収入を証する書面、財産を証する書面、借金を証する書面等が必要になります。また、特定調停の申立書は、正本(裁判所用)・副本(相手方用)・控えと、3部必要になります。
調停期日
特定調停申立後、調停期日が決まります。これはだいたい、申立ててから約1ヶ月後ですが、裁判所の混み具合によって相違あります。東京簡易裁判所では、債務者の事情聴取の期日が先に設けられ、その後、日を改めて、債権者との調停へと進んでいくようです。但し、事情によっては、債務者だけの事情聴取の日が設けられることもあります。従って、運用は、各簡易裁判所で相違があるようです。
事情聴取では、本人の生活状況、収入、財産などについて聞かれます。特に、生活の状況について念入りに聞かれます。なぜかというと、「返済し続けていくことができるかどうか」ということをみるからです。
調停本番では、来る債権者は稀で、ほとんどの債権者は来ないようです。債権者は事前に、郵便やFAXで上申書等の書類を送っています。調停委員はそれを見ながら、電話で調停を行います。調停が成立すれば、相手方が来ているときは、その場で「調停調書」が読み上げられ、作成されます。相手方が来ていない場合は、「調停に代わる決定(17条決定)」が出されます。
以後は、その内容に従って、債権者に返済を行っていきます。
特定調停と任意整理
「任意整理と特定調停」のところで書いています。「債務名義ができあがる」という特定調停のデメリットは避けたいものです。
特定調停と個人債務者再生
「任意整理と個人債務者再生」において書いたことと、そう変わりはありません。特定調停でも元本カットされませんので、「返済前提」ですと、やはり、元本がカットされる個人債務者再生のメリットは充分あるわけです。
現状
特定調停は、ご本人で行っているものが多いと思います。司法書士支援もあるでしょうが、ほとんどがご本人だけというものではないでしょうか。というのも、債務整理を行っている司法書士のほとんどが認定を得ていると思いますので、そうなると、特定調停ではなく、任意整理で債務整理をするからです。
当事務所も、認定を得てからは、特定調停はほとんど使わなくなりました。というのも、
- 債務名義ができあがってしまうので特定調停は避けたい
- 任意整理の方がやりやすい
というような理由からです。特定調停は、破産や再生ほど煩雑ではなく、調停委員もおり、また費用も低廉ですので、本人自ら行いやすい手続ではないかと思います。
特定調停の一般的なスケジュール
- 相談・受託
相談を受ける。受託をすれば、債権者に受任通知を発送。依頼者には、必要書類などを集めてもらう。
↓
- 打ち合わせ
必要書類などを受取る。不足書類があれば改めて。打ち合わせは、数回行います
↓相談・受託時より約1ヶ月〜
- 特定調停申立
はじめに、調停委員が本人から、いろいろ事情を聞く。支払可能かどうか、可能であれば、毎月どれくらいの額が返済可能かを調べる。債務者事情聴取と期日を一緒にする簡易裁判所もあれば、分ける裁判所もある。
↓ 約1ヶ月後(簡易裁判所によって相違)
- 調停期日
申立人は申立人待合室で、相手方は相手方待合室で待機。そして調停開始。相手方は来ない場合が多い。来ていても、相手方と顔をあわせるのは、調停が成立したときくらい。調停が成立したら、調停室に、申立人、相手方、裁判官、調停委員、裁判所書記官が揃って、裁判官が調書を読み上げる。相手方が来ていなければ、17条決定。
時間は、1社あたり約1時間。午前10時開始。12時〜午後1時は昼休憩。終了はだいたい午後4時まで。つまり、1日あたり5社が限度。従って、6社以上あれば、もう一回期日が入る可能性が強い。また、調停の状況によっては、もう一回期日が入る場合もある。
↓ 約1ヶ月後(簡易裁判所によって相違)
- 調停期日
延期したり、第2回調停を行う(続行する)ような場合。なお、第2回目以降は、前回の調停の場で期日が決まるので、裁判所から期日の通知等は送られてこない。
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