来る相続に備えて「贈与」という形で不動産を譲り渡す方がいらっしゃいますが、贈与の際に忘れてはならないのが不動産登記です。贈与には「生前贈与」「遺贈」「死因贈与」などがあり、どの贈与においても不動産登記が必要となります。ここでは、「遺贈」と「死因贈与」に焦点を当て、不動産登記との関係についてご紹介いたします。
遺贈とは
遺贈とは、遺言によって遺産を与えることを指します。受遺者は法定相続人である必要はないため、法定相続人以外の個人・法人に対し、自由に財産を譲り渡すことが可能です。遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」があり、それぞれ以下のような違いがあります。
包括遺贈
包括遺贈とは、財産を特定して与えるのではなく、「遺産の3割」「遺産の1/4」といったように「割合」を指定する遺贈のことをいいます。包括遺贈を受ける者は包括受遺者と呼ばれ、遺贈の割合に応じた債務も引き受けなければなりません。
特定遺贈
特定遺贈とは「〇〇の土地をAにあげる」といったように、特定の財産を指定して遺贈するものです。包括遺贈とは異なり、債務について特に指定がなければ負担する義務は負いません。相続人が受遺者となる場合は不動産取得税がかかりませんが、相続人以外が受遺者となる場合は不動産取得税がかかります。
死因贈与とは
死因贈与とは贈与契約の一種であり、贈与者の死亡によってその効力が生じます。遺贈は、遺言者の一方的な意思によって行われるものであるため受遺者の承諾は必要ありませんが、死因贈与は契約の一種であるため、当事者間の合意が必要となります。
なお、死因贈与は「贈与」という名称がつけられているため「贈与税」の対象となりそうですが、相続税の対象となります。
登記の違いについて
では、遺贈・死因贈与の不動産登記にはどのような違いがあるのでしょうか。まず前提として、遺言書に不動産を誰が相続するか、誰に遺贈するかなどの旨が記載されていても、贈与者の存命中にあらかじめ登記することはできません。
しかし、死因贈与の場合は「始期付所有権移転仮登記」をすることができます。始期付所有権移転仮登記は仮登記の一種であり、権利保全のため活用されるものです。
例えば、死因贈与契約後、当該不動産が二重譲渡された場合、登記を先に済ませた方が所有権を主張できますが(民法177条)、契約後に仮登記を済ませておくことで、贈与者は勝手に不動産を売却することができなくなります。
このように、遺贈・死因贈与は、どちらも被相続人となる方が存命のうちは登記の移転ができませんが、死因贈与に限り仮登記が可能です。
当事務所では、相続・贈与の不動産に関する登記や法人設立登記など、登記に関するご相談を承っております。必要書類や手続きに関することなど、分からないことがございましたらぜひ司法書士へご相談下さい。当事務所は東京・池袋にありますが、池袋に限らず幅広くご相談に応じますので、他地域の方もお気軽にご相談下さい。